京美会とは?

 京都は江戸時代を通じ、出版の最も盛んな都市の一つでした。江戸時代の本屋は出版、新刊書店、古書店をかねていました。本屋仲間で組合を作り、版木や古書のセリ市も行っていたようです。

 セリ市とは古書業界で言う「市会」のことで、本屋同士で相集って古書を競りにかけ、手持ちの本を売ったり、新たに本を仕入れたりする商いの場のことです。江戸時代より続く京都の古書店としては、文政年間創業の藤井文政堂、そして京美会の会員でもある佐々木竹苞書楼(宝暦元年創業)などがあります。

 現在、古書の市会は全国に数多あり、それぞれ古書の売買を活発に行っています。京美会もまたそのような市会の一つですが、京美会という名の通り、美術に関わる本のみを扱う市会という点で、他のそれとは異なります。美術書専門の市会は全国にも例がなく、京都にしかありません。京都は長らく美術工芸の中心地であり、染織業界をはじめとした伝統産業が盛んでした。そこに京美会の発生理由があり、存在意義があったことは明らかです。

 京美会の発足は京都古書組合の誕生よりも古く、昭和の初期に、かつて熊野神社近くに店を構えていた平安堂書店の店内で発足しました。戦後の京美会は、京都書院、平安堂書店、文苑堂、森晴進堂、佐々木竹苞書楼、有秀堂、善書堂などの書店を中心に、京都の染織・工芸産業の隆盛とともに発展していきました。取引がもっとも活発であった90年代前半には、京美会単独の即売会や大市会も開催しました。

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※過去に出された京美会の目録

 現在は、佐々木竹苞書楼、奥書房、平安堂書店、有秀堂、森晴進堂の古くからの会員に加え、アブストラクト古書店、小亀屋、あがたの森書房など、若い感性を持った会員も入りました。古書相場の変動、扱う本の流行りすたりはありますが、京美会では今なお、美術書、木版美術本、古典籍、浮世絵、古書画などを中心に活発に取引しています。これら古書の発掘・流通を自分たちの役割とし、これからも京都の出版文化を次代に伝えていく所存です。